フィルター発振から夜光への旅
2016 03/16
音作りの基本はフィルター発振
フィルター発振が好きすぎて、
ついつい使いすぎる傾向にあるのだけれどこれがまた・・・・
全く飽きない。
どんな音を作る時でも、
まず最初にオシレーター・・・・
ではなくフィルターを発振するところから始まる。
究極的に発振音を使った作品が作りたい、と長い間考えていた。
久々の夜光で・・・
話は変わるが去年の12月、
マネージャーと神奈川県川崎市にある工場地帯
「夜光」
に出向いた。
この地に足を踏み入れるのは、1986年以来、実に30年ぶりだ。
夜光から発振される音
私がプロデュースするgalcidのファーストアルバムのコンセプトに
なっている「夜光」は総面積88.2ha、人口94人。
工場群は無骨ながらパイプが複雑に絡み合う事で機能美があり、
芸術的な様相を呈している。
最初に訪れた1986年当時、
電子楽器の世界ではサンプリングマシーンが世の中を席巻しており、
インダストリアルなビートとこの夜光のイメージが合わさり、
自分の中では切っても切れないものとなっていた。
きっと、機械と機械がぶつかり合うアタックの強い衝撃音を
サンプリングマシーンのアタックトランケートと同化させて
イメージ付けしていたのだろう。
とても直線的で機械的なイメージというか・・・。
夜光との再会
30年ぶりに訪れた「夜光」は、僕にまた違う印象を与えた。
とにかく曲がりくねって複雑に入り混じるパイプ、
排出される蒸気、
さらに錆び付いた鉄の壁、
ゴムの残骸、
そして、工場のアスファルト地面からいたるところに顔を出す大量の雑草を目にし、
巨大な工場の装置がまるで
有機的な生き物(バケモノ)
に見えたのだ。
足を踏み入れてわかること
実はその時「夜光」を訪れた理由は、
galcidのジャケット写真を撮影するためのロケ班であった。
なんと、まだ一曲も録音していない段階でだ。
時々、都内からアクアラインに向かう際、横目には見ていた夜光。
近づいて足元に立ってみると、その迫力に圧倒され言葉を失う。
ほとんど無人状態
シューシューという轟音と煙を吐き出しながら
止まること無く動き続ける
その塊はまるで恐竜だ。
巨大恐怖症のボクには完全に閲覧注意物件である。
窒息しそうになる息苦しさを感じながらも、
その美しさの断片を音として残そうと、
フィールドレコーディングを試みた。
レコーディング
夜光を訪れた後、程なくしてgalcidのレコーディングが行われた。
即興を主軸にして活動してきたgalcidのファーストアルバムを
どのようなスタイルで録音し、
そしてアルバムとして完成させるか
非常に悩んだ。
活動を開始して2年ほど作品が出せなかったのも、
やはりそのスタイルを決めかねていたからだ。
・・・しかしながら、録音はやはり
即興で行われた。
たった1日で9曲を録音し終えたのだ。
そしてこのアルバムには、ほとんどダビング作業を行わず
- lena(Roland system100m)
- neon(TB3)
- 私(TR8)
が一発で録音した。
全て「夜光」を訪れた時のインプレッションをコンセプトに
インプロヴィゼーションを行った。
再び夜光へ・・・
レコーディングが完了し、
仮ミックスされたトラックを聴きながら
galcidのスチール撮影をしに再び「夜光」を訪れた時、
我々が録音した九つのトラックと
夜光の工場地帯、
そしてあのバケモノのようなパイプ
煙突の塊
これらのあまりの溶解に絶句した。